交際相手を密かに追跡するアプリとして知られる「ストーカーウェア」。アバスト が検出した一般的なストーカーウェアの広告とポジショニングを分析したところ、ストーカーウェアは、子どもを追跡するためにも使用されていることがわかりました。
アバストの情報セキュリティ最高責任者(CISO)のジャヤ・バルー(Jaya Baloo)は次のように述べています。「本人の同意なしに携帯電話にインストールできるストーカーウェアは、オンライン上の行動を監視する目的で使用されるため、倫理的に深刻な問題を孕んでいます。今回の調査では、これらのアプリが利用者を惹きつけるために行っている戦略を理解するため、アプリの宣伝文句を徹底的に分析しました。調査の結果、これらのアプリは、子どもを守りたいという親心を利用していることが分かりました。」
子どもを監視するこれらのアプリは、チャットアプリ、メール、通話、閲覧履歴の監視のほか、スマホの遠隔操作や、会話を録音することも可能です。ネットいじめ、不適切なコンテンツの閲覧、サイバー犯罪者との遭遇など、親が抱えがちな不安につけ込み、自社の製品をその解決策として位置づけています。
「子どもの同意がなくても追跡したい」と思う方もいるかもしれませんが、そうすることで親子関係にひびが入るだけでなく、かえって子どもの安全が損なわれる可能性もあります。
Kids N Clicks創設者のパーヴェン・カウル氏(Parven Kaur)は、ストーカーウェアの利用ではなく、子どもとオンラインやオフラインの安全について定期的に話し合うことを推奨しており、次のように述べています。
「子どもの年代と成熟度によって、話すトピックを選びましょう。小さい子どもには、まずインターネットの仕組みを簡単に紹介してはいかがでしょうか。例えば、世界中の人と繋がることができる国際都市としてインターネットをイメージしてもらったり、画面の向こう側には必ず別の人がいて、自分の言動がその人に影響する可能性がある、ということを考えてもらいましょう。」
また、心理セラピストで作家のキャサリン・ニブス氏(Catherine Knibbs)は次のように述べています。「(ストーカーウェアは)個人の自由の侵害であり、本人の同意なし追跡する点において、自己決定権の侵害です。子どもは親に信頼されていないと考え、自分に起こった出来事を共有しなくなります。ストーカーウェアは結果的に役に立ちません。」
ニブス氏はまた、親は子どものクリティカルシンキング(批判的思考)を習得させることに注視すべきだと指摘しています。
「子どもに『ネットの悪い人たちに気を付けて』と怖がらせるより、『オンライン上で連絡を取っている人が本当に友達かどうか、どうやって分かるの?』と聞いてみてはいかがでしょうか。」
様々なアプリに子どもを守るための保護設定がありますが、一番重要なのは子どもと正直に話し合うことです。
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ジャヤ・バルー氏は次のように指摘しています。「子どものオンライン上の行動には注意しましょう。ただ、本人の同意は不可欠です。ペアレンタルコントロールなどによる保護は便利ですが、ストーカーウェアを用いた保護は解決策になりません。子どもにもプライバシーと個人の自由があることを忘れずに、会話を通して信頼関係を築きましょう。」
この記事は2021年2月24日に公開されたStalkerware won't keep your kids safeの抄訳です。