ヒントとアドバイス

被害額が年間3億6,300万ドルにもおよぶ恋愛詐欺の実態とは?

Jeff Elder, 2019年7月23日

ソーシャルメディアや出会い系サイトで発生する詐欺は、サイバー犯罪の中で2番目に高い被害額を記録しています。

FBIが発表したサイバー犯罪に関するレポート(英語)によると、2018年にオンラインを用いた恋愛詐欺・信用詐欺の被害額は3億6,300万ドルに及び、ビジネスメール詐欺に次いで2番目に被害総額の高いサイバー犯罪であることが分かりました。

ではオンライン上の恋愛詐欺は、どのように発生するのでしょう? FBIのレポートでは、実際に起きた事例を公開し、警鐘を鳴らしています。

米テキサス州ヒューストン在住のある女性は、オンラインで交際していた “Charlie” に騙され、200万ドルを送金しました。数か月間やりとりをする内に、“Charlie” を信用してしまったのです。また、米オレゴン州に住むある男性は、オンラインで交際中の女性からお金を受け取り、女性が指定した口座に送金しました。しかし、それは女性が他の被害者からだまし取ったお金だったのです。彼は知らない間に、マネーロンダリングに加担してしまいました。

FBIは、こうしたオンライン上で発生する恋愛詐欺・信用詐欺ついて、「オンラインでのやり取りから、『家族、友人、恋人に相当する信頼関係がある』と信じ込ませ、金銭、個人情報等を送信させたり、マネーロンダリングに加担させたりするサイバー犯罪」と定義しています。

1日に約50件発生

FBIの発表によると、昨年1年間で発生したオンライン上の恋愛詐欺・信用詐欺は18,493件で、1日当たり平均50件を超えています。これは、個人情報窃盗の被害よりも13%高い数値です。

FBIによれば、主な被害者は夫と死別した年配の女性や、離婚した女性です。多くの場合、こうした女性たちが、コンピュータに精通した詐欺師を「白馬の王子様」だと思い込んでしまうのです。詐欺師はソーシャルメディアや出会い系サイトのプロフィールを利用して、被害者と同じ趣味や関心事があるように装い、ターゲットに近づきます。

長年、金融詐欺捜査に携わっている、FBIフロリダ州タンパ支部所属のChristine Beining 特別捜査官(写真)によれば、恋愛詐欺事件の件数は大幅に増加しています。ほとんどの人は「この問題の重大性を理解していない」とBeining 捜査官は語ります。

FBI.Beining

「寂しさを抱えた人たちが、出会いを求めてバーや教会に通う時代は終わりました。今では、スマホやPCから手軽な出会い系サイトを使います。出会い系サイトで恋人探しがより容易になりました。」 

しかし、便利さにはリスクも伴います。「恋愛詐欺は、実際の被害件数よりも、かなり少ない数しか報告されていません。これは、被害者が恋愛詐欺の被害に遭ったことを恥ずかしく思っているからです。」 ある被害者の女性が Beining捜査官に伝えた話では、彼女が詐欺被害を届け出ようとしたところ、担当した男性警察官に「あなたの年齢で出会い系サイトになんか登録しないでしょう」と言われたそうです。このようにレッテルを貼られると、余計に被害届を提出しにくくなると、Beining捜査官は言います。

恋愛詐欺を防ぐには

Beining捜査官は、詐欺に遭った場合は通報するよう、強く勧めています。

ここで、恋愛詐欺を疑うべきサインをご紹介しましょう。

  • 出会い系サイトでのやり取りを止め、メールやインスタントメッセージだけで連絡を取るよう求めてくる
  • 雑誌のモデルのような、魅力的な写真を送ってくる
  • すぐに愛を告白してきて、あなたを友人や家族から引き離そうとする
  • 仕事の関係で海外、または国内でも非常に離れた場所に住んでいると言う
  • あなたを訪ねると約束するものの、いつも急な用事でキャンセルされる
  • 金銭を求めてきたり、銀行口座間のやり取りを依頼してきたりする

世界最大級の恋愛・結婚マッチングサイトMatch.comは、会員間のメールの末尾に、誰かに送金したり、クレジットカード情報などの個人情報を提供したりしないよう注意事項を掲載しています。また、英語版の自社サイト上に「当社では高水準のセキュリティ対策を導入しておりますが、会員の皆様におかれましては、オンラインでの交際中は常に警戒するとともに、不審なプロフィールを見かけた場合は必ずご報告ください。他の会員様を詐欺被害から守ることにつながります」と掲載し、スパムアカウントの報告方法も案内しています。

アバスト ブログのコラムニストである Kevin Townsendによると、恋愛詐欺などのソーシャルエンジニアリングは心理操作を用いて、被害者を巻き込むといいます。「被害を意識することが、最大の対策です。ソーシャルエンジニアリングを阻止するには、怪しい要求を拒否すれば良いのです。しかし、『言うは易く行うは難し』で実行は難しいのが実情です」

セキュアブラウザアンチトラックも、ソーシャルメディアで発生する詐欺の対策として役立ちます。

紀元前3世紀の恋愛詐欺

出会い系サイトやソーシャルメディアを用いた詐欺は、昔から存在する心の弱みにつけこむ詐欺の21世紀版といえるでしょう。似たような事例は古代から確認されています。紀元前3世紀の中国では、嫪毐(ろうあい)という名の男娼が未亡人となった趙姫(ちょうき)を騙して富を得ました。

FBIのBeining捜査官が体験談を話してくれました。

「私は先日、恋愛詐欺に遭ったと訴える女性に、事情聴取を行いました。詐欺だと分かっていながら、なぜ送金したのか尋ねると、彼女はこう言いました。『誰かに愛されたかったんです。』」

古代と現代、両時代の恋愛詐欺に共通しているのは、心の脆弱性です。