Apple社は2021年4月、iPhoneおよびiPad向けにiOS 14.5の提供を開始しました。今回のリリースには、デジタルプライバシーに関する方針とサポートを大きく変えるアップデートが含まれています。
WhatsAppなどのメッセージアプリは、ユーザーからデータを収集し、SNSや広告ネットワークにそのデータを共有しています。今回のアップデートは、このような状況に対応したものでもあり、EUやカリフォルニア州などでのデータプライバシー法の強化や、一般の人々のプライバシーに対する感度が高まった結果でもあります。AppleのCEOであるティム・クック(Tim Cook)氏は2021年4月、Toronto Star紙とのインタビューで、アプリは追跡やターゲット広告についてユーザーに同意を求めるべきだと述べています。ユーザーの関心を追跡しているものの、実際にその情報を何に使っているを明らかにしないFacebookなどのサービスを非難しているのです。
トラッキング防止を優先
最新のiOSでは、アプリがマイクやカメラを使用しているとき、小さなオレンジ色の点が表示されます。しかし、これで完全にハッキングを防げるわけではありません。メッセージングアプリTelegramも被害を受けた、ToxicEye攻撃のようなデータ盗用はまだ起きる可能性はあります。
以前のiOSにも、トラッキング防止機能は存在していました。設定アプリから「プライバシー」→「トラッキング」に行き、トラッキング機能をオフにしたり、特定のアプリに対して有効にしたりすることができました。また、アプリをインストールすると、どのトラッキング機能を許可するかを尋ねる通知が表示されました。
iOS 14.5では、すべてのアプリのプログラミングインターフェースの一部となる主要なプライバシー機能「App Tracking Transparency」が搭載されています。これにより、アプリはデータを収集する前に許可を求めることが義務付けられます。以前はこのような許可はApp Storeでカタログ化されていました。Appleの他のデバイスでも、プライバシー保護インターフェースを拡張するアップデートが近々行われる予定です。MacRumorsは、「iOS 14.5で展開されたようなトラッキング防止機能は広く採用されることになるだろう」と述べています。
個人情報保護の強化
プライバシーが問題視されるようになった理由として、個人情報の流出の増加が挙げられます。FICO社の調査によると、調査対象となった米国居住者の25%とカナダ在住者の15%が、過去に自分の個人情報が漏洩した可能性が高いと考えていることがわかりました。これは、アカウントの乗っ取りが増加していることを示す、ほかの調査結果とも一致します。米国連邦取引委員会によると、2019年から2020年にかけて、個人情報に関するクレームも45%増加しました。
出典:Insurance Information Institute
データプライバシーは改善されつつあり、アプリがユーザー情報をどう利用しているかについて、少なくともAppleのデバイスでは管理体制や透明性が向上しています。今後はユーザー自身が個人情報の管理方法を学び、どのアプリがどの情報にアクセスして良いかを判断しなければなりません。Forbesのケイト・オーフラハティ(Kate O'Flaherty)氏は次のように述べています。「今後、アプリがあなたを追跡できるかは、あなた次第です。」
この記事は2021年4月28日に公開されたWhat Apple's iOS update means for digital privacy and identityの抄訳です。