「市民権」とは一般的に、国家に属する人々が対象の権利と義務を指します。例えば日本国民は、表現の自由の権利があり、教育・勤労・納税の三大義務があります。また、国によっては、政権に反対する権利や、不当な捜索や押収を受けない権利などもあります。
では、「デジタル市民」とは何でしょうか?オンラインの世界は国境もなければ、政権や指導者もいません。デジタル市民の権利と義務について見ていきましょう。
デジタル市民の権利は?
アバストでは、 インターネットへのアクセスと、自由・セキュリティ・プライバシーの権利を有している人を「デジタル市民」と定義しています。デジタル市民には、以下の権利があります。
- デジタルの世界にアクセスする権利
- プライバシーへの権利
- データ保護の権利
- 表現の自由の権利
- コミュニケーションの自由の権利
- 自身のアイデンティティを所有する権利
- データ収集に関する説明と、許可を受ける権利
- 忘れられる権利
- 匿名性の権利
- ハッキング、フィッシング、追跡されない権利
デジタル市民の義務とは?
デジタル市民には、以下の義務があります。
- 相手と意見の相違があっても、敬意をもってコミュニケーションをとる
- 偽情報の共有を拒否する
- 他人の知的財産を尊重する
- 他人の個人情報や機密情報を公開しない
- サイバーシステムに無断で侵入しない
- どのような情報を公開してはいけないかについて理解する
- ログイン情報を保護する
このように、良き市民として社会で求められていることは、デジタルの世界と共通するところがあります。国家(オンラインの場合、SNSを運営しているIT企業など)が私たちの権利を侵害した場合、その責任を追及しなければいけないという点も共通しています。
「デジタル・シチズンシップ」の重要性
1990年代以降、オフラインの出来事をインターネット上で話すときに使う「IRL (in real life)」という言葉が広まりました。しかし、インターネットの利用時間がますます増えている中、その言葉はもはや現代には通用しなくなっています。インターネットが私たちの生活の大きな一部として根付いている今、私たちは、自国の市民としての権利や義務を把握しなければいけないのと同じように、良きデジタル市民になることについて学ぶ必要があるのです。
人々はオンラインでの脅威と、実社会の脅威から得る感情を区別できないとされています。そのため、掲示板、SNS、チャットアプリ、コメント欄などでのネガティブなやり取りは心身の健康に長期的な影響をもたらします。また、デジタル・シチズンシップは個人だけでなく、実社会全体にも直接的な影響を与えることが最近の出来事で明らかになっています。例えば、2011年のアラブの春では、Twitterが活動家の間で広く使われました。また、Facebookは偽情報の拡散に重要な役割を果たし、米国大統領選挙やミャンマーでのイスラム教徒ロヒンギャの迫害など、さまざまな出来事を左右しています。
つまり、インターネットは今や現実世界の一部で、それと相応の扱いが必要なのです。
知っておきたい「デジタル・シチズンシップ」の最新情報
- 世界人口の61%にあたる48億人が、インターネットを利用しています。
- 毎日、約70万人がインターネットをはじめて利用しています。
- オンライン上のプライバシー保護は、私たちに与えられている権利です。
- デジタル市民は「国家」に所属しないため、お互いに責任を持たなければなりません。
- オンラインと「リアル」の世界の境界線は日に日に薄れています。
- 各国の政府は、自国民のデジタル市民としての権利と義務について異なる見解を持っています。
子どものための「デジタル・シチズンシップ教育」
「デジタル・シチズンシップ」は多くの学校のカリキュラムに含まれるようになりましたが、後れを取っている学校もあります。親と教員が活用できる、参考情報を以下にご紹介します。