IoTデバイスが、家庭内暴力に利用されています

Grace Macej 3 12 2021

自宅に潜むデバイスが悪用されるかもしれません。

家庭内暴力が依然として深刻化しています。

内閣府の男女共同参画局の調査によると、2020年に全国の配偶者暴力相談支援センターなどが受けた家庭内暴力の相談件数は、19万件以上であり、2019年度の約1.6倍となりました。さらに、日本の女性の約4人に1人で被害経験があり、約10人に1人は何度も配偶者からの暴力の被害を受けているという結果も出ています。

イングランドとウェールズでも、女性の4人に1人以上が、家庭内暴力を経験するとされています。そして、1週間に2人の女性が現在または過去のパートナーに殺されています。イギリスの慈善団体のRefugeは、毎日7,000人以上の女性や子どもを支援しており、その人たちを専門家につなげるNational Domestic Abuse Helplineも運営しています。

この度、アバストとRefugeは、デバイスを利用した家庭内暴力について警鐘を鳴らすべく、共同で調査しました。

IoTデバイスと家庭内暴力の関係性

IoTデバイスは、家庭内暴力の加害者が被害者を虐待し、支配するために利用されることがあります。アバストとRefugeは共同で調査を行い、家庭内暴力の被害者から最も多く報告されているIoTデバイスのトップ10を明らかにしました。両者は共にCoalition Against Stalkerwareのメンバーであり、この調査を通して、虐待者によるオンラインでの追跡や虐待に対抗する取り組みを支援していきます。

家庭内暴力の被害者がRefugeに報告したIoTデバイスは、以下の通りです。

  • Amazonのスマート・ドアベル「Ring」
  • Amazonのスマート・スピーカー「Echo」と内蔵アプリ「Alexa」
  • Googleのスマートホーム管理デバイス「Google Home Hub」
  • Googleの「Nest Thermostat」などのスマート・サーモスタット
  • スマートテレビ
  • スマート・プラグ
  • スマートウォッチ
  • ワイヤレスシステム
  • アプリで自宅の鍵の施錠・解錠ができるスマートロック
  • 監視カメラ

IoTデバイスを利用した家庭内暴力の実態は?

アバストとRefugeが英国の女性2,000人を対象に実施した調査によると、約半数(48%)が、悪用される可能性があると思われるデバイスを1つもあげられないことがわかり、55歳以上では60%に上りました。さらに、66%は、家庭内の機器が不正使用されていると感じた場合、その機器をセキュアにするための情報の入手先がわからないと回答し、45歳以上では約8割(79%)にまで上っています。

また、英国の女性のうち、自宅のIoTデバイスの管理権限を持っているのは64%に過ぎず、27%は、これらのデバイスの管理権限が家庭内で平等に共有されていない、あるいは透明性が確保されていないと回答しています。18%が自宅のWi-Fi設定をコントロールできないが、パートナーや家族はコントロールできることも明らかになりました。

さらに、41%は、私用のIoTデバイスのパスワードはパートナーや家族に知られていると回答していますが、パスワードを意図的に教えたのは約7割(72%)にとどまっています。

RefugeのCEOであるルース・デイヴィソン氏(Ruth Davison)は、次のように述べています。「多くの女性は、パートナーにパスワードを渡すように強要されていることや、Wi-Fiを通じて家族の一員に監視されていることに気付かないかもしれません。そのため、今回の調査結果は憂慮すべきものですが、氷山の一角に過ぎません。イギリスの女性の4人に1人が一生のうちに家庭内暴力を経験するとされている中、デバイスを利用した虐待が増加しています。今日の社会では、テクノロジーを避けることはできません。そのため、私たちはアバストと提携し、この問題に対する認識を高めるとともに、女性たちに、これらのデバイスが悪用された場合の潜在的な危険性を軽減するための対処法を提供したいと考えています。」

自宅のデバイスを保護するには?

今回の調査結果を受けて、アバストとRefugeは、家庭にあるデバイスが虐待者にコントロールされている兆候を見つけるためのヒントや、これらのデバイスを保護するためのアドバイスを紹介するウェブサイトを公開しました。このインタラアクティブなウェブサイトは、一般的な一軒家の各部屋によく置かれているデバイスを表示しています。デバイスにクリックすると、そのデバイスが悪用されているサインと対処法を確認できます。

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アバストの最高情報セキュリティ責任者(CISO)であるジャヤ・バルー(Jaya Baloo)は、次のように述べています。「Refugeに最も報告されたデバイスのトップ10はどれも非常に人気で、よく利用されています。これらが家庭内暴力で悪用されていることを知ると、とても不安になります。この情報をもとに、アバストの脅威脅威研究所は、これらのデバイスを徹底的に調べ、不正使用の兆候を見極めるための明確で実用的なアドバイスと、デバイスを保護し、リスクを軽減するためのヒントを提供しました。これらのデバイスは日常生活の一部となっています。テクノロジーの乱用が継続的な脅威となっている今、私たちは女性たちが自分自身を守るために必要な情報とアドバイスを届けるためにできる限りのことをしたいと考えています。」

ルイーズさんのストーリー

IoTデバイスによる虐待を受けたルイーズさん(仮名)は、次のように語っています。「私の加害者はIT関連の仕事をしていて、私には理解できるはずがないと、自宅のWi-Fiをコントロールしていました。新型コロナウイルス感染症によるロックダウン期間中、彼の虐待はエスカレートし、私は自分の身を守るための手段を講じる必要がありました。そして、虐待を記録するためにいくつかのスマートホームデバイスを設定しました。」

「虐待をしているパートナーが、これらのデバイスをハッキングして、私へのストーカー行為や、私の通話を盗聴したり、監視したりすることに利用されるのを、考えもしませんでした。私が外出して家に戻ると、物が汚れていたり、なくなっていたりすることがありました。ところがカメラを確認すると、その時の記録はありませんでした。」

「私はそれが理解できず、自分自身を疑い続けました。加害者は何も触っていないと否定しますが、私のプライベートな会話の内容を知っていることをほのめかします。怖くて、混乱して、トラウマになりそうでした。そんな中、Refugeを見つけ、助けを求めました。Refugeの支援で、自分の経験がデバイスを利用した虐待であることを認識し、自分のデバイスを少しずつコントロールできるようになりました。元パートナーはもう私の家には住んでいませんが、いまだにデバイスの近くにいると落ち着きません。彼がまだ聞いたり見たりしているかもしれないということが頭の片隅に残って、自由になれないのです。」

この記事は2021年10月19日に公開したHere are the top 10 IoT devices reported by domestic abuse victimsの抄訳です。

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