誰もが自分の身を守るために変化に適応しようとする中、働き方も転換を余儀なくされています。長期にわたる在宅勤務制度を採用した企業は、その整備が急がれています。こうした状況から、ITとセキュリティ分野の責任者はさまざまな課題に直面しています。自身の体験を記したSlackの創業者のTwitterスレッドは、従業員を在宅勤務に移行させようとしている企業の参考になるかもしれません。
以下は、筆者がアバストにおいて、この状況の最前線で実際に体験したことです。アバストもSlack同様、多くの国や地域に従業員を抱えるテクノロジー企業です。ただし、アバストには調整が必要な点がいくつかありました。以下は、アバストの経験則と、この移行に取り組む企業へのアドバイスです。
- テレワークの前提:テレワークは、すべての従業員がインターネットに接続し、企業の重要な資料にアクセスすることが大前提です。従業員が仕事を遂行するためには、会社の資産を適切かつ安全に保護するツールが必要です。同時に、従業員がDropboxやその他の個人的な手段など、シャドーITリソースの使用を好む可能性も考慮しなければなりません。利便性を真っ向から否定せず、テレワークを支援するための計画を事前に立てましょう。
- 自宅のデスクでの課題:誰もがノートパソコンを持っているからといって、テレワークにスムーズに移行できるとは限りません。通常、オフィスでは自分の席にドッキングステーション、大きなキーボード、デュアルモニターが設置されています。在宅勤務では、こうした周辺機器なしで仕事をしなければなりません。各自の状況に応じて、従業員がオフィスの機器を自宅に持ち帰ったり、外部モニターやノートパソコンを補完する他のツールの購入を許可する規程を早急に策定する必要があります。
- 帯域幅:多くの家庭はブロードバンド接続を利用していますが、自宅用ネットワークでは、特にアップロード速度やビデオ会議や大きなファイルのやり取りに対応できない可能性も考えられます。テストを行って、自宅の帯域幅を必要に応じてアップグレードできるよう、計画を立てましょう。また、これに関する規程も設けて、従業員が自分で解決できるようにしておきましょう。
- ビデオ会議:テレワーク中も社員とのつながりを維持するには、全員がスムーズにビデオ会議に参加できるようにする必要があります。共通ソフトウェアを選び、企業向けライセンスを購入しましょう。また、適した音声ツール(マイクとスピーカー)の数を十分に確保しましょう。ノートパソコンの内蔵ツールでは不十分な場合、予備を購入する必要も生じます。会議の仮想化が進む中、ビデオ会議の重要性は高まっています。オンラインで参加できるイベントについては、こちらを定期的にチェックしましょう。
- ビデオ会議のエチケット:ビデオ会議を実施するうえでのエチケットを知っておくことも大切です。たとえば、服装や背景に映る部屋など、画面に映るものへの考慮も必要です。Zoomの場合、自宅の様子を隠せるよう仮想背景を提供しています。
- 印刷とファイルの共有:オフィスでは印刷やファイルの共有は当たり前にできていましたが、テレワークでは技術面とセキュリティ面での問題が生じる可能性があります。IT部門ではこれらに関する課題を理解し、テレワークでも企業データの安全性を維持する方法を提示する必要があります。
- その他のツール:まだ決まっていない場合、会社で共通したオンラインプラットフォーム(Office 365 やG Suiteなど)を選びましょう。臨時のソリューションで間に合わせようとするのは得策ではありません。また、社員がリモートアクセス時に必要となる具体的なシステムを把握し、適切なVPNやその他のエンドツーエンド暗号化技術によって、リモートアクセスの安全性を確保しましょう。
- メンターやITヘルプデスクによるサポート:すでにテレワーク中の社員がいる企業は、初めてテレワークを開始する同僚がスムーズに移行できるよう、サポートしてもらえるかどうかを確認しましょう。通常の業務時間の中で、初心者をサポートする時間をあらかじめ確保しておきましょう。在宅勤務を支援する方法、ツール、予期される技術的問題に関して、ヘルプデスク向けトレーニングを開始しましょう。
テレワークには多くの課題がありますが、会社の回復力やセキュリティに対する全社的な取り組みの改善、生産性におけるメリットといったプラスの面も多数あります。安全に在宅勤務を実施し、従業員の健康を守りましょう。
この記事は2020年3月17日に公開されたWFH not WTF: How to make the transition to a total working-from-home companyの抄訳です。