アバストはこの度、プラハ本社にてIoTラボをオープンしました。ラボには、数十台のデバイス、Wi-Fiルーター30台、3Dプリンター3台、合計6kmのケーブルが装備され、来訪者に IoT技術に関する情報を提供するとともに、リサーチャーやアナリストが日々IoTの研究を行う最先端の施設になっています。
アバスト IoTラボのファラデーケージを紹介するウラジスラフ・イリューシン
まず注目したいのは、無線周波の実験に使用するファラデーケージです。放送、政府、軍隊のネットワークを妨害する可能性がある信号を送信することは違法であるため、業界でこの実験を行えるラボはほとんどありません。アバストはファラデー ケージと呼ばれる電磁信号の出入をブロックする金属の壁でできた部屋(EMC が遮断された部屋)を使用することで、ケージ内の信号がケージ外の信号を妨害しないようにしています。
ラボでは、アバストオムニを見ることもできます。これはネットワークベースの新しいコンシューマー向けセキュリティ製品で、屋内でも屋外でもデバイスを保護できます。オムニは脆弱なIoTデバイスに侵入しようとするマルウェアをブロックするとともに、感染したIoTデバイスを停止させます。
このIoTラボは、アバストのIoT脅威リサーチャー、ウラジスラフ・イリューシン(Vladislav Iliushin)とマルコ・ズビルカ(Marko Žbirka)が丹精込めて作り上げました。「ラボを完成させるのに1 年かかりました。消費者が保護を必要とする、サイバーセキュリティにおけるこの重要分野で、研究に従事できることを嬉しく思います」と、イリューシンは語ります。
「アバストのリサーチャーがサイバー犯罪者の一歩先を行くためのリソースが、このラボには集結しています。ここでは、エミュレーターではなく本物のハードウェア上でIoTマルウェアのサンプルを動かしたり、はんだ付け用の機器や顕微鏡を使用してハードウェアをハッキングしてみたり、多くの企業では実施不可能な放送波の実験を行ったりと、多様なIoTデバイスのセキュリティ分析を行うことができます。私たちはこの充実した施設で、サイバー犯罪を未然に防ぐ取り組みを展開していきます。」
ラボでは、一見害がなさそうなデバイスを詳細に分析し、脅威を発見することができます。たとえば、ラボで展示されているIoTコーヒーメーカーは、実はアバストのリサーチャーが遠隔操作でハッキングしてランサムウェアマシンに変えたものです。
リサーチャーがハードウェアの分析を行う作業台
ハードウェアを分析するために設置された作業台では、リサーチャーがはんだ付けツールや高性能な顕微鏡を用いてハードウェアを詳細に調べることができます。その様子を見学し、驚く人も多いようです。しかし、IoTへのサイバー犯罪に対抗するためには、包括的なアプローチが不可欠です。「『なぜ、これほどまでに?』と疑問に思う人も多いのですが、答えは簡単です。ハッカーは、私たちがセキュリティ ソフトウェアの会社かどうかなんて気にしません。彼らはツールを駆使してデバイスの脆弱性を探し出そうとするため、私たちもあらゆるツールと手段を使ってそれを阻止する必要があるのです」とイリューシンは言います。
一方、1秒当たり10ギガビットの接続環境を実現した超高速インターネットも設置されています。大容量のデータセットを秒単位でダウンロードできるため、リサーチャーは素早く脅威に対応することができるのです。また、サーバールームではスマートホームが集まった地区を再現。現実世界のIoTについて考察を深めることができます。「多彩なアイデアを活かしたこの部屋では、約100件の物理的なスマートホームネットワークに多種多様のデバイスを接続して、さまざまな実験を行うことができます」と、ズビルカは語ります。
稼働中のコンピューターが見える透明の机
さらに、ラボには稼働中のコンピューター2台の内部をのぞくことができる、透明な机もあります。
ただし、ラボにあるものすべてが「スマート」というわけではありません。ラボのクローゼットに置かれた電子レンジはクイックスタートもなく、わざわざボタンを押さないと扉も開きません。なぜ、これほど近未来的な施設でありながら、時代遅れな機械があるのでしょうか。イリューシンは笑いながら答えました。「歴史を振り返ることも大切です」。
この記事は2019年11月8日に公開されたAvast opens Internet of Things Labの抄訳です。