筆者が大学生の頃、Amazonは高額な教科書を安く入手するための手段に過ぎませんでした。「プライム」は米国産牛肉のグレードを意味する言葉でしたし、即日発送なんて夢のまた夢。ジェフ・ベゾス氏の名前すら、あまり知られていませんでした。
しかし現在、Amazonはあらゆるサービスを提供しています。自宅配送を軸にした販売モデルは、社会に大きなインパクトを与えました。また、新型コロナウイルスの影響で外出が制限されるなか、Amazonの存在感は更に強まっています。多くの人にとって、生活に不可欠なサービスとなったのです。
最近は宇宙事業にまで手を伸ばしている「Amazon帝国」ですが、その基盤はユーザーデータです。あなたのデータや、私のデータ。私の両親のデータに、あなたの友人のデータまで、あらゆる人のデータを収集して活用することで、Amazonは世界屈指の巨大企業になりました。
ここで、2021年夏時点でのAmazonの製品・サービスの一覧を見てみましょう。
- クラウド コンピューティング
- アマゾン ウェブ サービス(AWS)
- Amazon Photos
- Amazon Drive
- Amazon S3
- エンターテインメント
- Amazonプライム ビデオ
- Twitch
- Prime Music
- Amazon Music
- Amazon Fire TV
- Amazon Luna
- Kindle ダイレクト・パブリッシング
- Eコマース
- Amazonマーケットプレイス
- Amazonベーシック
- Amazonビジネス
- Amazon Vine
- 電子機器
- Kindle
- Kindle Fireタブレット
- Fire TV Stick
- Echo & Alexa
- 配達
- Amazon Flex
- Amazon Logistics
- 食料品
ご覧の通り、Amazonは数多くのサービスを展開しており、上記以外にも様々な子会社が傘下にあります。Amazonはあなたが利用しているサービスに応じて、あなたから多くの情報を入手している可能性があります。
そこで、私自身が利用しているサービスを挙げつつ、Amazonが私のどんな情報を収集しているのか、考えていきたいと思います。
Amazonが、私について知っていること
私が利用しているアマゾンのサービスは、Amazonマーケットプレイス、Amazonプライム、そしてKindleです。
Amazonマーケットプレイスは別名amazon.comで、一般的にAmazonとして認知されているEコマースのサービスです。Amazonマーケットプレイスは、私のことを最もよく知っているAmazonのサービスだと思います。私は、トイレットペーパーや鉢植えの土、裁縫道具に化粧品などの様々な商品を、ついAmazonで注文してしまいます。こうした日々の購買行動が蓄積するため、Amazonの注文履歴はFacebookの履歴よりも私のことを知っているかもしれません。
例えば、Amazonは私が裁縫や刺繍をしていることを確実に知っています。家の近くに生地街があるにもかかわらず、店頭で手に入りにくい道具をオンラインで注文しているからです。グリニーズやグルーミングブラシ、トイレの砂などもAmazonで注文しているので、私が猫を飼っていることも知られているでしょう。コーヒーの注文頻度から、私が大のコーヒー好きであることも知られています。
また、私はAmazonプライム ビデオの会員です。そのため、Amazonは私がどんなコンテンツをを好むか、どの時間帯に映画やドラマを見ているか、何に興味があるのか、把握しているでしょう。
Kindleについても同様、本好きの私をよく知っています。最近、私はB級ホラー小説にハマっているのですが、Kindle内では多くのB級ホラーがオススメに表示されるようになりました。また、機内モードのオン・オフによって、Amazonは私がいつKindleで本を読んでいるのか知っています。
以上が、Amazonが私について知っている内容です。Amazonのプライバシーポリシーを見てみると、「Amazonに提供される情報」(ユーザーが購入したもの、視聴したもの、レビューしたもの、住所やメールアドレスなどのアカウント情報など)、「自動的に取得する情報」(Cookieやその他のウェブ識別子を介して収集された情報)、「その他の情報」(パートナーからの配送情報、クレジットカードの履歴、子会社とのやりとりに関する情報など)を収集していると記載されています。また、第三者の広告主が私の情報を取得する可能性についても言及されています。
私はカリフォルニア州に住んでおり、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)で自分のデータを削除する権利が保護されていますが、権利を行使するとAmazonの一部サービスが制限されたり、利用できなくなったりします。ヨーロッパに住んでGDPRの保護下にある方も同様です。
データと引き換えに、何を得られるのでしょうか?
私はデータと引き換えに、玄関先に山積していくダンボール、そして商品を受け取っています。つまり、私は利便性を得ているのです。都市の様々な店で、商品を探し出すのに費やす時間と労力を、ワンクリックで解消しています。
ここで考えるべきは、自分のデータを提供することに「価値がある」かどうかです。Amazonの場合、この問題は少し複雑です。Amazonが提供する利便性と価格は魅力的ですが、この巨大企業が私の個人情報を多量に取得していると思うと、安心できません。また、Amazon社の労働体制や、ジェフ・ベゾス氏がマーベルコミックの悪役に似ていることも少し気になります。
私は、Amazonの利用を完全に止めようと思っています。同社の労働体制や地球環境に与える影響が個人的にも気になりますし、私は世界的な巨大企業よりも小規模でローカルなビジネスをサポートしたいと思っています。ただ、パンデミックが収拾するまで、Amazonを断つのは少し難しそうです。脱Amazonを目標にしつつ、当分の間、保留にしておきます。
この目標はあくまでも私個人の意向ですが、Amazonに限らず、オンラインサービスとプライバシーの関係について考えることは大切です。利用中のサービスを見直し、それを使い続ける「価値がある」のか、検討してみてはいかがでしょうか?
この記事は2021年8月3日に公開されたWhat does Amazon know about you?の抄訳です。