シニア世代の中には、最新技術を敬遠してしまう方もいますが、世代を問わず使えるテクノロジーもあります。この記事では、米国在住のジョンさんとアイリーンさんの話を例としつつ、シニアだからこそ使いたいスマートウォッチについて考えます。
ある日、ジョンさんの友人であるアイリーンさんは突然具合が悪くなり、自宅で倒れてしまいました。なんとか這って電話のある場所までたどりつきましたが、助けを呼ぶまでに1時間かかりました。彼女は無事に回復しましたが、周囲の人々は今後も同じことが起こるのではないかと心配しました。
自宅で自立した生活を続けたいアイリーンさんですが、ジョンさんは不安を隠し切れません。「アイリーンがまた倒れたらどうしよう?倒れたまま助けを呼ぶことができなかったら?」と、つい考えてしまったそうです。
そこでジョンさんは、 転倒検出機能がついたお年寄り向けのネックレスをアイリーンさんにプレゼントしようと考えました。使用者が倒れたことを検知し、自動で救急車などを呼ぶ特殊なネックレスです。ところがアイリーンさんは、「お年寄り」のイメージが強いアクセサリーを身につけることを嫌がり、ネックレスを断ってしまいました。
スマートウォッチの転倒検出機能
ジョンさんは、もう少し調べ続けたところ、Apple Watchにも転倒検出機能があることを知りました。そして、アイリーンさんの安全のために、Apple WatchとiPhoneをプレゼントすることに決めたのです。Apple Watchの転倒検出機能を使用するにはiPhoneも必要で、アイリーンさんは両方持っていませんでした。
同じ機能ではあっても、アイリーンさんにとってネックレスとApple Watchには大きな違いがありました。ネックレスをつけると自分がお年寄りだと強く感じてしまう一方、Apple Watchは自分のことを「最新技術を使いこなすカッコいい女性」だと思わせてくれたそうです。もちろん、Apple Watchには他の機能も搭載されているので、アイリーンさんはより一層喜びました。
Apple製品は機能、セキュリティ、プライバシーの面で優れているものの、安価ではありません。モデルにもよりますが、Apple Watchはおよそ4万円から8万円、iPhoneは10万円近くかかります。ジョンさんのように奮発できない場合は、ご家族やご本人と相談しましょう。また、他のスマートウォッチを検討することもできます。まだ種類は多くないですが、Apple Watchのようなカッコよさと救命機能を兼ね備えたデバイスが、登場してきています。
例えば、中国の電気機器メーカーTCLが発表した「Movetime Family Watch MT43A」は、転倒検出機能だけでなく、薬のリマインダー機能も搭載されているため、薬の飲み忘れ防止にも役立ちます。睡眠の追跡機能も備えており、健康管理に力を入れたこのデバイスは、価格もヨーロッパで229ユーロ(約3万円)と比較的安価です。日本ではまだ発売されていませんが、こうした機器がオンラインや家電量販店で簡単に購入できる日はそう遠くないでしょう。
高齢のご両親や友人の自立と安全を同時に確保するのは、なかなか困難です。団塊世代や団塊ジュニアと呼ばれる方々が高齢になるにつれて、その難しさに直面する人は増えていくでしょう。そうした状況で役立つのが、スマートウォッチです。こうしたテクノロジーは、万が一の備えとしても有効なので、一つの選択肢として検討してみましょう。
この記事は2021年1月25日に公開されたTech can help us protect seniors (without them feeling old)の抄訳です。