顔認識技術が消費者にもたらす影響

顔認識技術は、社会と消費者に多くの複雑な問題をもたらしています。

顔認識技術のスタートアップClearview AIについて聞いたことがある方はまだ少ないかもしれません。メディアや政治家、プライバシーに関する活動家の批判を集めている同社は、ニューヨークタイムズに「プライバシーを終わらせる」会社と呼ばれています。

Clearview AIとは一体、どのような会社なのでしょうか。1960年代から存在するテクノロジーを、どのように刷新させてきたのでしょうか。そして、なぜその技術革新は一般消費者にとって危険なのでしょうか。

まず、背景を簡単にご説明します。ニューヨークを拠点とするこのスタートアップは、より多くの角度から、より正確な一致を生成する画期的な顔認識システムを開発しました。同社はこの技術を警察や企業に提供しています。この技術の特徴として、身元不明者の写真を、Clearview AIがインターネットから取得した画像と照合できることが挙げられます。30億枚の画像を持つClearview AIのデータベースには、FacebookやTwitterなどのウェブサイトに投稿された写真が含まれています。

当技術を利用するメリットは明白です。同社は、正確なベクトルと大量の画像を利用し、殺人鬼や小児性犯罪者などを発見した実績を紹介しています。

一方で、潜在的な問題点もあります。

プライバシー支持者は、顔認識技術の広範囲な使用は技術とプライバシーの不文律を破ると主張しています。Googleなどのテクノロジー企業は何年もの間、倫理的な理由で顔認証技術を開発しない判断をしてきました。米国サンフランシスコなど、顔認証技術の使用を拒否している都市もあります。Clearview AIはその先進的な技術を600を超える法執行機関に提供していますが、公開審査は経ていません。

さらに、Clearview AIの顔認識技術が悪用される可能性についても懸念が寄せられています。悪質な検察官が画像照合技術を利用して敵対する相手の所有する情報を覗き見したり、好きな人のデートをストーキングしていたら?政府が顔認証技術を使用し、活動家の過去を調べたら?エンドユーザーが一般の人を誤認してしまい、飛行機のチケットや政府からの給付金を止められたら?法執行機関があなたの銀行口座やメールにアクセスしたら?危険な犯罪者を追い詰めることもできますが、このような悪用の可能性も考えられるのです。

サンタクララ大学ハイテク法研究所の共同ディレクターであるエリック・ゴールドマン(Eric Goldman)はニューヨークタイムズで「顔認証技術の兵器化の可能性は無限大」と述べています。

ウェブ上に投稿された写真は公共の領域にあるため、使用することは権利の範囲内だと、Clearview AIは主張しています。しかし、ほとんどの人がこれは一線を越えていると言うでしょう。

Clearview AIがデータを収集しているサービスを持つ企業は、独自のルールを作っています。Twitter、YouTube、およびFacebookは、Clearview AIが収集したすべてのデータを削除するよう要求しています。またAppleも、Clearview AIのiPhoneアプリをブロックしています。

最近、データ侵害によりClearview AIの顧客リストが公開され、問題が大きくなっています。同社は法執行機関のみが顧客だと主張していたにもかかわらず、そのリストには27カ国2,200団体がリストされており、Walmart、Best Buy、Bank of America、NBAなどの非政府組織が含まれていました。

写真がすでに入手され、個人情報と照合されている場合、消費者には何ができるのでしょうか?

アバスト脅威研究所のリサーチャーであるマーティン・フロン(Martin Hron)は次のように述べています。「Facebook上のご自身の写真をすべて削除することもできますが、すでにウェブ上でキャッシュされている場合は意味がありません。 Facebookにデータの削除を依頼することはできますが、その場合アカウント全体を削除する必要があります。」

プライバシーに関する法律は、消費者をある程度保護しているといえます。カリフォルニア州の住民は、カリフォルニア州消費者プライバシー法により、Clearview AIにより収集されたデータを確認し、データベースからの削除を要求することができます。EU圏内に済む人も、データの削除を要求できます。

この事例からは学ぶべきことが多くあります。顔認識技術は、社会と消費者に多くの複雑な問題を提起しています。Clearview AIが一般市民からは見えないところでシステムを静かに拡大していたことは、政府がこの問題に先手を打って対応していく必要性を示しています。

この記事は2020年3月13日に公開されたFacing facts: Clearview AI case’s impact on consumers訳です。

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