新たな技術やサービスの登場とともにさまざまな手口が生み出され、多様化・巧妙化するサイバー犯罪。いまAvastのサイバーセキュリティ専門家が注目する手法のひとつが、慈善目的を装い不当な寄付を募るクラウドファンディング詐欺です。
「愛犬の治療費を集めるため、募金をお願いします」——このような投稿をSNS上で見たことはありませんか? これは日本で話題になったクラウドファンディング詐欺の実例です。
このケースでは、「先天的な疾患が見つかった愛犬の治療費・手術費用を集めるため」と称してクラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げ。プロジェクトページに掲載された起案者の必死の訴えに多くの人が胸をうたれ、多額の寄付金を調達することに成功。ところが、起案者の愛犬は支援金を募る2ヵ月前に亡くなっていたことが後に判明。プロジェクトは真っ赤なウソだったのです。
この事件はニュースやSNSでも話題になったため、知っている人も多いかもしれませんね。
似たような手口のクラウドファンディング詐欺は海外でも増えています。
最近海外で話題になっていたのが、「セミオンくん」という少年のがん治療費援助の寄付を訴える動画。すぐに治療を始めなければ少年の命が危ういということを訴える字幕が複数の言語で付けられ、動画が終わると、視聴者は寄付金の入金方法が掲載されたページにリダイレクトされます。この動画サイトやSNSで拡散されました。
「人の善意につけこんで寄付を募る手法は、近年よく見かけるようになった」と、Avastのサイバーセキュリティ研究者ルイス・コロンズさんは危機感を募らせます。結局、人々の情感にうまく訴えかけることに成功したこのプロジェクトは、20万ユーロ以上の寄付を集めることに成功しました。
「セミオンくん」キャンペーンの起案者は、このプロジェクトは「World Champions」 というイスラエルの組織との連携によるものだと主張。AvastはWorld Champions に連絡を取ろうと試みたものの、何の返答もありませんでした。
これと類似する活動は2022年にも確認されています。同じくイスラエル発のそのプロジェクトでは、数百万回の動画再生回数と65万ドル以上の寄付を集めることに成功しています。
人の情感に訴えかけ、善意を巧妙に利用して寄付を集めようとするクラウドファンディング詐欺。
騙されないためには、「メールや動画、SNS広告だけを見て寄付するのではなく、必ず信頼のおける団体の公式ウェブサイトを訪問して、事前に情報を集めること」が不可欠だとコロンズさん。
AvastのSNSチャンネルでも、疑わしいクラウドファンディングの宣伝を見かけた場合はフォロワーに注意を促したり、詐欺的なチャンネルを YouTube に報告したりするなど、このような詐欺に対して積極的に対抗しています。
Avastは今後も詐欺行為を特定し追跡するだけでなく、サイバー犯罪の手口に関する一般市民の注意喚起や、詐欺から人々を守る強固なソリューション構築・提供など、さまざまな角度からのアプローチでサイバー犯罪と戦っていきます。