2021年半ばに販売開始されたApple AirTag。その年末には、同意なしにユーザーを追跡するために悪用されていることが報道されました。被害を受けた女性たちは、カバンの中や車のタイヤ、コートのポケットなどにAirTagを発見しました。2022年もこのようなAirTagの悪用に関する報告が続いています。
米国National Network to End Domestic Violence(NNEDV)のテクノロジー セーフティ プロジェクト マネージャーであるトビー・シュルラフ氏(Toby Shulruff)が位置情報の追跡がストーカー行為に使われる可能性があることに気づいたのは、2017年でした。しかし当時、その技術はあまり高度ではなかったと振り返ります。「自称『過保護な夫』たちがYouTubeなどのSNSで、位置情報の追跡は役に立たないと述べていました。当時市場に出ていた製品は、Appleなどの多くの人が利用している企業のものではなかったため、ストーカー行為のために利用するのは難しかったのです。」
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現在3,800円(税込)から販売されているAirTagはもともと、所有物を管理するためのものでした。この製品は、AppleデバイスのBluetoothセンサーを使用し、対象のアイテムの位置をピンポイントで特定します。物や人をほぼリアルタイムで追跡することが可能なため、パートナーから暴力を受けている人々にとっては、引っ越し先を知られるなど、依然としてリスクがあるとシュルラフ氏は指摘します。
Appleは、AirTagが悪用される可能性を早くに察知し、警告システムを組み込みました。iPhoneユーザーの近くに自分が所有していないAirTagが確認されると、「Find My」アプリが「不明な持ち物が検出されました」というメッセージを表示し、AirTagの所有者が位置を確認できることを警告します。またAirTagは、所有者から一定時間以上離れると、音が鳴るようになっています。
Androidユーザーに関しては、AirTagの販売開始から6ヵ月後に、AirTag発見アプリがリリースされました。約40万回ダウンロードされているこのアプリは、Appleユーザーでない人々への保護を提供しますが、アプリをインストールした場合に限ります。つまり、何百万もの人々が、知らないうちに追跡される危険にさらされているのです。
しかしシュルラフ氏は、AirTagの利用をやめるべき、と主張しているわけではないと言います。これらの製品は、持ち物の管理などの日常的な用途だけでなく、誘拐などの犯罪防止にも利用できるからです。
また、残念ながらAirTagは、ストーカーが被害者を追跡するための手段の一つに過ぎません。シュルラフ氏は、このデジタル時代において、パートナーから暴力を受けている人が安全を確保することはより困難になっていると懸念しています。
「多くの被害者は、自分がどのようにストーカー行為を受けているのか、正確に把握できていません。SNS、電話番号、追跡装置など、さまざまなサービスを通した追跡が可能なため、虐待者やストーカーが全知全能であるように感じてしまうこともあります。」
シュルラフ氏は、人々の生活環境が常に変化している中、安全で信頼できる製品が犯罪に使われかねないことを、Appleを含むすべての企業が考慮すべきだと言います。企業はユーザーに対して、どのような情報を第三者に共有していて、その情報に誰がアクセスでき、どのように情報共有のオン・オフを設定できるか、明確にするべきです。そして、情報は簡単にアクセスでき、必要であれば簡単に変更できるべきです。
AirTagなどの製品は常時更新されているため、同意なしに追跡されていると思う方は、対策について検索してみるか、NNEDVのテクノロジーの安全性およびプライバシーに関するウェブページ(英語)を確認することをシュルラフ氏はおすすめしています。また、パートナーからの暴力は一人で悩まず、DV相談ナビ #8008に相談しましょう。
この記事は2022年2月8日に公開されたApple AirTags are being used to track people without their consentの抄訳です。